選択する難しさと、オバマの話法


なんだか最近、中身の薄い忙しさが増えて、いやですね。別に中身の濃い忙しさならそんなに嫌いじゃないし、メンタルに疲労が来なくてよいのでもつんですけど。これムダだなーとか、何でこんなことに時間さかなきゃならんの?とか思ってしまうと、もう精神衛生が悪化します。

そう思って、最近読んだのがこれ。


必ず最善の答えが見つかる クリエイティブ・チョイス

必ず最善の答えが見つかる クリエイティブ・チョイス


最近のマイブーム、というかマイテーマが”曖昧力”だったんですね、ここ一ヶ月くらい。無理に白黒つけにかかるのではなく、一見矛盾することをどちらかを否定することなく受け入れ、二項構造的選択をせずに第三の方向性を模索するっていう。人と分かり合うためにかなり重要になってくるスキルだと思って最近。「やるべきか否か」とか「AかBかどっちか」とか、そういうことではない思考を常にもてるかと。

で、この本にずばりそのことが書いてあって、痛く刺さったというわけです。以下印象的な部分の抜粋ね。↓



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・「XかYか」「イエスかノーか?」といった、二分法的思考は、我々の視野を狭め、推論を限定してしまう。2つの選択肢の可能性さえ考慮すればよしとし、その他の多くの潜在的な選択肢と、そのいずれかを選んだことで得られたかもしれない肯定的な結果、それらすべてを見逃すことになる。「半分だけする」「両方するが、時期をずらす」といった、【第三の解】は必ず見つけることが出来る。選択肢をどう作り出し、選択に対する満足度をどう高めるか。それこそ考えるべきである。


・「ORの抑圧」に屈することなく、「ANDの才能」をもって、様々な側面の両極にあるものを同時に追求する。(ジェームス・コリンズ)


・選択というダイナミックなプロセスを目に見えるように整理できれば、これまで「なんとなく」だった選択に自分の意思を反映していける。その積み重ねが、自他ともに認める「創造的な選択」につながっていくのではないか。


・創造的な選択のあり方4類型。
 1.自主的な選択:「そもそも何が目的か?」「何が選択肢になりうるか?」を自分から考える。
 2.目的にかなった選択心理的偏りや、社会・組織の常識を一旦脇において、目的にまっすぐ向かえる選択を目指す。
 3.機を逃さない選択:たとえ「何もしない」選択でも、「自信を持って見送った」といえるように、いかなるタイミングで出来事が降りかかってきても最良の選択ができるように。
 4.後悔のない選択:結果は必ずしもコントロールできない。選択に至るまでのプロセスを重視し、後悔の少ない選択を目指す。


・創造的選択の大原則
 1.【目的】 : おもいきって、かつ個人的な目的を立てる
 2.【手段】 : 論理的に、かつ直感で選択肢を広げる
 3.【試行】 : 偶然を求めて、かつ勇気を出して踏み出す
 4.【自得】 : 楽しみながら、かつ終わらない物語を創る


・我々は矛盾にぶつかると、それを減らすように選択肢を絞込みがちである。(認知的不協和)
 我々は、過去の選択と矛盾しないような保守的な選択をしがちである。 (一貫性)
 我々は、多くの選択肢を持つと、選択を先送りにしがちである。 (決定麻痺)


・成功した人々はみな一様に、問題をその背景全体とともにとらえている。彼らは解決策と、拡大された目的の関係を理解しようとしていた。これは問題に対する目的の系列化(目的展開)をさせたことを意味する。あらゆる問題をさらに広い視野で眺めることを可能にし、創造力を発揮させるきっかけとなるものがこの【目的展開】である。


・目的を洗い出すためのリスト
 ・目的を列挙したか
 ・問題に対する目的を拡大したか
 ・問題に対する目的をさらにいっそう探求したか
 ・達成しようとしている目的は何か
 ・もっと大きな目的はなにか
 ・何を達成しようとしているのか、本当に分かっているのか
 ・顧客の目的、またその顧客の顧客の目的は何か
 ・小さな目的達成の必要をなくすような、より一層大きな目的は何か


・「情熱+能力+価値」=我がこと感のある目的の三要素。自分の「情熱」を注げることに「能力」を発揮して、「価値」を認めてもらう。それが好循環を形成する。そのような好循環の弾み車が回っている状態が「まだ見ぬ島」であり、弾み車の揺るがぬ中心が「北極星」です。


・個人的な情熱も、突き詰めていくと他人から共感される「価値」につながる。このつながり方を「インサイドアウト」と呼ぶ。逆に、組織の目的を深く考えていくに連れ、だんだん個人的なことに移っていくこともいえる。(アウトサイドイン)


・自分のやりたいことを突き詰めていくと、それが自分の中では完結しないことに気づく。やりたいことに挑戦し、他人に認めてもらったり感謝されたりするサイクルに生きていく中で、自分より大きな何かに貢献することが、究極の快楽であることを知る。つまり究極の自利とは、利他である。


・「目的を明確に描くことで選択肢が創出しやすくなる」一方で、「具体的な選択肢を試してみないと、目的を明確にすることはできない」のである。


・必要なのは、「賢い失敗」。あとから振り返ったときに「創造的な選択」のためにそれが必要だったといえるような失敗。


・大きな選択をされた方に話しを聞くと、「外から見れば一つの大きな選択であっても、内部では小さな選択の積み重ねである」。勇気というスキルを高める一つの方法は、「小さなチャレンジに分解し、試していく」やりかたを磨くこと。


・「あいまいさに耐える」ことによるメリットは、①客観的な選択ができる ②創造的な選択の核こそ、曖昧さだから。「多くの人は宙ぶらりんの心地悪さから解放されたくて、即断の誘惑にさらされるが、決断に時間をかければかけるほど、結果は賢明で理にかなったものになるはずだ」ルドルフ・ジュリアーニ


・「決断に時間をかける」というのは、単なる「先延ばし」「決定麻痺」ではない。すぐに考え始めて、期限いっぱい考えつづけるということ。


・「〜しかない」という思考は創造的な選択を壊す最大の要因。我々は自らに対して常に、「目的は何か?」「もっとも望ましい状態はなにか?」と意識的に問いかけていく必要がある。


・「○○は大切だが、すべてではない」と捉える事で、視野を広げ、思い込みから開放させる。


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長くなりましたねw でも、二項構造の危険性の話や、認知的不協和の話はすでに思い当たる節が盛りだくさんだったので、すごい参考になりましたね。思考法系の本はたくさん世にあるとは思いますが、この本は納得感が非常に高かったです。

広告を仕事にすると、本当に”選択”が難しいと思わされる機会が多いんですね。答えはないし、何がベストか考えるときも、そのベストの定義自体を自分たちで規定しないといけない、それにその規定はもちろん、対外的に納得感のあるものでないといけない。となると、「どの選択をするか」よりも、「その選択が何故ベストといえるか」の方が重要だったりする。そうすると、ミーティング一つ一つの濃度を可能な限り高めて、有意義な会をいかに積み重ねられるかが、ビジネスのクオリティそのものだったりするんです。にもかかわらず、あまりミーティング設計というものに意識を割いている人がそんなにいないように私は感じるし、それが今この業界がまずい一つの要因のような気すらします。

「なぜ、それをチョイスしたのか。」これをもっと突き詰めないといけないですね。


また、二項構造の危険性については、オバマの演説が何故支持されるかという話ともつながってくると個人的には思うのですね。オバマ氏は演説で、よく「二律背反関係の否定」という話法を使います。「対話か強行か、ではなく事柄一つ一つを見極めて個別に対応を熟慮すべきだ」みたいなね。この話法の優れているところは、なんだかすごくその考え方が「新しい感じ」に見えるというところです。それこそ”第三の選択肢”のように見えて、今まで泥沼化していた物事が新たな策を見出せたような期待感で包まれる感覚とでもいいましょうか。それこそまさに、オバマ氏が「創造的選択」の概念を実践しているからだと思うのです。結果として彼は下馬評を覆し大統領選挙で圧勝、民衆が”Change!”を求め、それに演説の話法一つとっても巧みにオバマ氏が応えたと言えるんじゃないでしょうか。



人生は選択だ、ってコピーがあったような無かったような気がしますが、できる事なら創造的な選択を重ねていきたいとこですね。ではでは、業務に戻ります。。。

※著者・堀内浩二氏のブログ 【発想七日!