This is it


「ファッションが教えてくれること」を観てまいりました。



 以下、オフィシャルサイトより〜〜〜


 2007年、米版ヴォーグ・秋のファッション特大号である9月号、締め切り5ヶ月前。一年で最も重要な号の準備に、編集長であるアナ・ウィンターは忙しい。トレンド傾向を見極め、特集するべきテーマを決め、撮影準備に入っていく。部員から提案される掲載候補の服に対し、有無を言わせずに採用・不採用を決め、重要なブランドの事務所を訪れ、コレクション前の洋服を見てデザイナーに歯に衣着せぬ意見を言い、メガ・ブランドのコラボレーション企画に合う新進のデザイナーを提案するなど、まさに分刻みで仕事をこなしていく。彼女とともに働く編集部員も、彼女の要求に応えるために必死だ。ある者は用意した服やモデルをすべて却下され、ある物は大金を使って撮影したほとんどの写真をボツにされ、ある者は撮影そのもののやり直しを命じられる。途方にくれる部員たち。しかし締め切りは迫ってくる――



 スピルバーグに認められなくても名作と呼ばれる映画は作れるし、ゲイツに認められなくとも便利なソフトウェアは作れる。けど、アナに認められない限り、ファッションデザイナーとしての真の成功はありえないと。それだけ彼女が唯一無二の絶対的な存在であるっていうことで、それって非常に特異な構造だと思うんです。それでも、アメリカの女性の10人に1人がVOGUEを買い、ファッション業界の方向性を決める、それがたった一人彼女の決断で決まるんだから、すごい。


 合議とか、多数決が平和で正しい物事の決め方であるということを、多くの日本人はちっさいときから教わっているわけで、彼女のやり方は非常にワンマンに見えるかもしれない。けど、ファッションという正解がないものに向かうときに、彼女=正解になることで調和が保たれているような、そんな印象を受けました。結局最後は、誰かが決断しないといけないんだし、多数決からじゃ面白いものは生まれない。自分の経験と感性を100%信じ、まっすぐに発言する彼女の潔さと、おそらく心の中に渦巻いているだろう葛藤を一切見せない氷のような眼差しは、嗚呼プロフェッショナル中のプロフェッショナルでした。


 スティーヴ・ジョブズマイケル・ジャクソン、アナ・ウィンター。ある1人の個人の中に全ての設計図・構想が入っていて、その先見性や実行力、決断力が世に齎した感動とか利便とかは否定できないですよね。決断のスピードを極限まで求めたら、取るべき最良の形態は”個人”になるのは自明の理。そこで如何にバランスをとるか。ジョブズはアップルの中では確かにトップダウンかもしれないけれど、シリコンバレー全体を見渡す視点と、外部からの指摘を受け入れる柔軟性は持っていると聞きました。マイケルも映画の中で、ケニー・オルテガという有能なディレクターに全幅の信頼を寄せ、ニュアンス論をそのまま彼にぶつけていました。アナも然り、VOGUEのNo.2、グレース・コディントンの才能と努力に絶大な信頼を寄せ、グレースもまた、アナに唯一、直言できる存在としてアナにバランスを齎しているようにも見えました。


 決断力と、バランス。そこには信頼できる右腕がいるのだなーという、今日の発見。


 アナはまさに”This is it”でした。圧倒的な仕事に対するプライド。圧巻です。