営業とは因果な商売です。

広告営業力〈2〉アカウントプランニング編

広告営業力〈2〉アカウントプランニング編


 広告営業力2、読みました。広告営業に携わる方々の経験に基づく営業極意集、みたいな感じでしょうか。”2”ということでアカウントプランナー編らしいのですが、アイデア作成にコミットする営業、くらいのスタンスであくまでも営業の方紹介の色が濃い本で、本当にプランナーなのは博報堂ケトルの木村健太郎さんくらいだったとは思いますが。バイザウェイ、発言抜粋。


ADK 高橋直子
・対企業として考えた時に、私たちは常にいい意味で”フレックス”であるべき。その時その時で的確に課題を把握して、前向きで現実的な提案を行えるか。そしてしっかりした見積もりを出し、着実に実施して成果をあげることができるか。
・本当に自分がベストだと思うことが、うそなく言えるかどうか。日頃から両社が意見やアイデアを出し合えるグッドフェイスな関係でいるためには、本当に自分がベストだと思えることが、うそなく言えるかどうか。

猿人 西川聖一
・APに必要な要素、それは切り口を見つける、未来を見つける予測力。
・世の中を見て→アイデアが降ってきたら→企画を作ってしまい→最後にクライアントを考える。アイデアが先というやり方もありだと思う。
・その会社の株を買ってまで、クライアントのところへ行ったこともある。「あの、株主のものなんですけど」と。
・西川氏が考える、プレゼンの処方箋
 1.ふつ〜の人間であれ。
 2.人間という、”動物”が顧客である。
 3.ロジックはつまらん。
    →理屈で感情は動かない。普通に話せ。正しいことを。
 4.直感ありき。
    →頭からふっとわくアイデアが商品。
    →調査で答えが出れば、すべての会社は成功している。
 5.モノサシは、自分の金で買えるか。
 6.正しいプレゼンと、勝つプレゼンは違う。
    →勝たなければ、何も始まらない。
    →それは、勝つために必要なのか、と問え。
    →勝てば、時間をかけながらクライアントを正しい方向に案内できる。
 7.勝つもの以外はそぎ落とす勇気。
 8.幼稚園でも分かるシンプルさ。
 9.短時間で、印象に残す方法に集中する。
 10.経営者は、相談相手を求めている。
    →オレに本当のことを言ってくれ。
    →美辞麗句丁寧な言葉より、もうかるアイデアを求めている。
 11.クライアントはサラリーマン。
 12.外人という、ポジショニング
    →三番目の相談相手というニッチポジション
 13.こびるな、プロだろ。
 14.考えた深さが、迫力の栄養となる。
 15.人間という動物は資料に勝る。
 16.キャラを活用せよ。
 17.何が流行ってるって言ったところで、それはもう過ぎた事。
 18.未来に続く道を語れ。
 19.未開の領域に挑戦せよ。
 20.謙虚に誠実に。
・自分が作った小さなとっかかりの「アイデアの玉」を、そのアイデアが面白いと思ってくれた人たちみんなで雪だるま式にどんどん大きくしていくような。
アカウントプランニングに必要なのは、「みんなを巻き込むムード」。要は何かを「旗揚げ」「発見」をするみたいなことがこのシゴトの意味ではないか。
・クライアントからのブリーフに書いてある事だけから判断するのは難しいもの。それはクライアントの”本音”ではないこともままあるから。なんらかの事情で紙には残せない大切な本音・本質を読みつくすソリューションを考える。確かに、それがクライアントのオーダーシートではあるので、そこに向かって誰もが企画を考えるのですが、それよりも前にまず、「そこはどんな会社か。」「社長の信念はなにか。」を見極めるべき。

風とバラッド 長崎幹広
・与えられた課題に沿って提案するだけでなく、必ず+αを持っていくようにしている。こころよく思わないクライアントは少ない。
・批評家に成り下がらないこと。最低でも複数案、いつも新人みたいな新鮮な気持ちで自分の考えたアイデアをミーティング時に持っていくようにしている。

東急エージェンシー 神田亮
・他の人の考えも自分の思いつきも、とりあえず形にして書類に定着させてみる。さらにクライアントが考えている事と自分たちが考えている事をクロスさせ、徐々に整理してく。それを繰り返す事で少しずつお互いの認識にズレがなくなり、共通の方向性を見出すことができる。
・広告を作る際、その価値だけを伝える事はあまり重要視していない。その商品価値を伝えることを満たした上で、さらに広告の世界観全体で大きな社会的な価値を満たすものを作りたいと思っている。イエモン=お茶のおいしさはもちろん、理想の夫婦像も伝えているのではないか。
・人は、言語の違い、創造力の違いなど、さまざまな多くの違いから、驚くほどに情報を共有することができません。そうして認識のズレが商品の価値や広告の完成度を低くしていく。そのズレをなくすのがアカウントプランナーの仕事。

dof 齋藤太郎
・情報は一方向から取ったところで価値はない。三方向以上から情報を取って、初めて情報としての真実味、正確性がある。「3つの情報元」ということではなく、方向が異なる事が大事。立場が違う人から取ってくる、みたいな。
・クライアントが広告業界やコミュニケーションに一番求めている事は「効率のいいメディア露出」でも「インパクトのあるクリエイティブ」でもない。大切なのはクライアントの「マーケティング的な成功」だと思う。要するに、売れること。
フィクサーでありたい。FIXとは「調整する」「整える」「決定する」のような意味。いろいろなものをつなげて、ベストな状態へ持っていくことが自分のシゴト。

博報堂ケトル 木村健太郎
・対話コミュニケーションでも伝えられるのは本当に伝えたいことの3%程度。なのに広告は相手の目を見ることも直接対話することもできない。たった3%も通じないものをどうやって4%、5%にしていくか、なにができるか。
・人それぞれ信じるものが違うのがチーム。マーケが「戦略最適」クリエイターが「CM表現最適」メディアが「メディア最適」でモノを観ていたら、なかなか「全体最適」にはならない。もちろんベースに「クライアント最適」はあるのだけど、それぞれの思う「最適」になるのは、みんな信じているものに違いがあるから。だから、バケツリレーをやめる、全部一人の人が責任を持つというやり方もありだと思う。
・「意識と無意識の間」が一番面白い。アカウントプランニングはその無意識なものを言語化する手法、つまり「課題解決、コミュニケーションのツボをみつける」のがそれ。「課題」=サイエンスと、「表現」=アートをつなぐのがアカウントプランニング
・プレゼンを受けたクライアントも、「なんかいい感じだけど、なんでいいのか説明して」と絶対に言ってくる。それを説明できなければ、通る企画も通らない。
・リアル風より、リアルが強い。
・結局、アカウントプランニングに必要なのは、「見えないものを見ようとする力」「感じようとするチカラ」です。言葉にするのはとっても難しいが、「幸せをイマジネーションする力」みたいなことなのかもしれない。妄想力。ただ妄想力だけではリアリティがなさすぎる。だからそれをリアルにするために「手口のデザイン」がセットで必要になってくる。「理想とするイメージ」と「具体的なアウトプット」がセットで創造できて初めて、「解決アイデア」になる。
アカウントプランニングには「金銭感覚」がないといけない。APには「投資に対する説明責任」もある。課題解決のアイデアには当然、ビジネス感覚が含まれたものでなくてはならない。プランニングスタッフにももっと投資のリスクを共有する感覚が必要だと思う。

マッキャンエリクソン 秦市郎
・アカウントプランナーとは何か、を考えるなら、それはお金の現実性など営業的な感覚を持ち合わせながら、「自ら分析して企画立案」できてしまう人、ということ。


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 行動力と緻密な計画さえあれば、自分が思ってるよりも自分がやりたいことできる環境なはずだったんだよなあってことを思い出しました。社会人も2年目ともなると恐ろしいもので、結構型にはまりだす部分が出てくる。恐ろしいことですよ、そうやって会社に飼いならされていく。反省。


 にしても、木村健太郎さんの言ってることが一番共感できるなあ。お会いしたい。お話したい。なんてね。