五感、六感、七感、八感


 存在を知ってからずっと行きたいと思ってたダイアローグインザダークへ行ってきました。



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 ダイアログ・イン・ザ・ダーク(Dialogue in the Dark)とは、日常生活のさまざまな内容をまっくらな空間で、聴覚や触覚など視覚以外の感覚を使って体験するエンターテインメント形式のワークショップ。「DID」と略称されている。参加者は8人以下のグループを組み、完全に光が遮断された真っ暗闇のなかに入る。視覚障碍者のアテンドスタッフのサポートのもと、暗闇の世界を探検し、音、匂い、味、温度、感触を真っ暗闇の中で体験してみる。小川のせせらぎを聞いたり、森の中を歩いたり、バーでドリンクを飲んだり、通常1時間半のツアーになる。視覚が使えないことで、視覚以外の五感が研ぎ澄まされるのを感じる。また、外見や肩書きにとらわれない、ヒューマンであたたかいコミュニケーションの可能性を見出せるプログラムになっている。お互いの体験・感じていることを交換して、人と人との新しい関係も構築することが出来ることが特徴である。
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 人生初体験、っていうのは歳くってくと日常ではなかなか無くなって行って、それって日常が反復に陥っているということでもあると思うのですが、だから個人的には久々の初体験だったような気がするのです。完全な真っ暗。子供のころ、目をつぶって眼球を指で押しつけると暗闇なのに、指の形に圧の影で見えて楽しくてずっとやってたことがあって、個人的にはひそかにそれで目が悪くなったんじゃないかと思っていてお母さんごめんなさいなんですけど。それに近いのでしょうか。真っ暗なんだけど、真っ黒じゃない。


 視覚がまずなくなって、目をつぶっていても開いていても何も変わらない。あとの頼りは鼻と耳と肌と、まあ一部舌もつかったり。こうやって今振り返っても視覚の思い出が全くすっぽり残らないということ自体、すごく特異な一時間強だったように思う。ただね、ああ人間は五感以上の何かを、それはもう数限りなく持っているのだなあと思ったんですね。家に帰って布団に入って目をつぶった時、あの空間での「距離感の記憶」が残っていて、鳥肌が立って。このくらいのとことこのくらいのとこにあれがあってー、みたいな。距離感って視覚によるものだと思っていたのですが、もしかしたら訓練次第では切り離せるのかもしれない。あと、自分の身体の感覚。よく、頭の後ろで手を合わせられない人はいないとかいいますよね、そこが見えてないのにと。それって自分の身体だからなせる技で、身体の隅々まで意識を張り巡らせば、少なくとも目をつぶっても今自分の身体がどういう形でどこらへんまで存在しているのか、自分とそれ以外の境目がどういう風にあるのかは、分かるらしくて。大学時代、ピアノの練習でそんなことやってた時期もあったっけね。それが、暗闇でますます研ぎ澄まされて。視覚はないのに、自分の身体のシルエットを脳が像で結んでくれるんですよ!これがすごくて。ああここに手があるなーとかの推測じゃなくて、もう見えてる、明確に。ああ自分の身体、大事だなあとか思ってました。

 
 なにより心が開かれる気がして。なんか日頃の自分の横柄な態度を反省してました勝手に笑 そこにいるすべての人が、自分の助けになってくれる感覚。それって別に視覚があろうとなかろうと関係のない、尊い感情なはずなのにね。


 においと肌触りと音にこんなに意識を割いたことはなかったし、さらに自分が今まで眠らせて存在にすら気付かなかった感覚にも少し触れた気がして、とてもよかった、あーよかったよかった。まだまだやっているので、オススメいたしますよ。是非是非。