偏る勇気、というか肯定


BRUTUS ( ブルータス ) 2010年 5/1号 [雑誌]

BRUTUS ( ブルータス ) 2010年 5/1号 [雑誌]


 最新のBRUTUSの特集が、結構有意義系特集でよいです。【真似のできない仕事術2】。昨年11月のBRUTUSに”1”は組まれてて、そのときもこんな記事にしたためておいたのですが。今回は人選も少し捻られていて、中々面白かったです。各々、自分流の仕事の鉄則3か条を挙げて、それを軸にインタビューが進行していくという構成なので、その3か条だけでも列挙!


・星野佳路 (「星野リゾート代表取締役社長)
 1.デジカメは大事なパートナー
 2.アイデア<場の空気
 3.目指すは社員満足度100%
 

・片山正通 (「Wonderwall」代表・インテリアデザイナー)
 1.鈍感力より、超敏感力
 2.サービス至上主義
 3.”ふつう”を恐れない
 

・伊藤直樹 (「W+K TOKYO」エグゼクティブクリエイティブディレクター)
 1.一度泣く。
 2.”食べる”と”出す”を分ける。
 3.説得はしない。
 

浅野いにお (漫画家)
 1.アイデアはメモるより、人に話す。
 2.力尽きるまで、やる。
 3.自分が一番、面白い!
 

・松本圭介 (僧侶・仏教コンテンツプロデューサー)
 1.”信じる”を信じない。
 2.新しいことは、古いものの中に探す。
 3.”ご縁”を見極める。


・阿部千登勢 (「sacai」デザイナー・社長)
 1.自分の手の届く範囲で。
 2.心の中のご意見番をつくる。
 3.極力ボツにしない。


佐野研二郎 (アートディレクター・クリエイティブディレクター)
 1.アイデアの始まりはラクガキから。
 2.コンセプトを英語で考えてみよう。
 3.メールを読んだら、30秒で返す。


アントニオ猪木 (実業家・プロレスラー)
 1.大事なことほど、直感で決める。
 2.カネのためじゃなく、ロマンのために。
 3.失敗しても、死ぬわけじゃない。


・針谷建二郎 (「ANSWER」代表・クリエイティブディレクター)
 1.隙を作る。
 2.頭を混乱させる。
 3.”普通”の会社にする。


福富太郎 (飲食店経営者)
 1.女たらしより、人たらし。
 2.”当たり前”に逆行する。
 3.自分の眼しか信じない。


ジェームズ・ダイソン (「Dyson」創設者・エンジニア)
 1.”間違った考え方”をしてみる。
 2.優勢、劣勢、関係なし。
 3.目先のことより時代を変える革命を。


 加えて、注目のチーム・企業の社是的なものも一部。


・nendo (家具・プロダクト・空間デザイン)
 1.アイデアは鮮度重視。
 2.スタッフは自転車通勤圏内に引越し。
 3.採用はポートフォリオ無視。


・シェ・パニーズ (カリフォルニアキュイジーヌ・レストラン)
 1.昨日と違うことをする。
 2.チームに指揮者はいらない。
 3.技術ではなく”やり方”を教える。


・フラワー・ロボティクス (ロボットデザイン)
 1.絶対的な場所をつくる。
 2.身の回りも身につけるものもモノトーンで。
 3.ランチは当番制で自炊する。


レベルファイブ (ゲームソフト制作)
 1.オフィスは世間へのプレゼン。
 2.クリエイターは独りにしない。
 3.つくる前から宣伝を考える。


 世の中に革新的な価値をもたらしている人は、当然のことながら人とは少し違う思考のスタイルや、思考をお膳立てする行動のスタイルを持っていることが多いとは思うのですが、なんとはなしに、「革新的な人はこういうことしてそう!」みたいなプロトタイプみたいな意識が人々の中にあるのも事実。プロトタイプになっちゃってる時点で革新的ではないと思うのですけどね・・・笑 そういう意味ではうちにもそういう固定観念はあって、そうやな、たとえばめっさ朝型とか、ね。みんながみんなそういうわけではないし、朝型なだけがその人が革新的たる所以ではもちろんないにも関わらず、ね。だからそういう意味で、片山正通氏の「”ふつう”を恐れない」とか、針谷建二郎氏の「普通の会社にする」なんていうのは、結構新鮮でした。普通って、ものすごく難しいくせに、みんな分かった気になっている、モヤモヤとした虚像だと思っているので、それをつかもうとするのって、つかもう!っていう気になるところからそもそも難しい。そこをちゃんと意識に折り込むことは重要なのかも知れない。みんなの”ふつう”をつかんでおく、意識。


 あと少しずれるけど、伊藤直樹氏の「説得しない」。これは、全会一致の意見しか彼は認めないという文脈の中で、勢いとか上下関係でアイデアを押し通さないということで語られていたのですが、意外でした。よく、「全会一致のアイデアは面白くなれない」なんていろいろなところで聴く話なんだけども、伊藤氏は「人間がつくって、人間が感じることですから、絶対に共有できるポイントはあるんですよ。そしてそのポイントが正解なんです」と言っている。以前のエントリー椎名林檎についてちょっと洞察した時、彼女も同じく、「音楽に正解はある」と言い切っていて。それは正解の対義語が間違い、ってことではなくて間違いはないのかもしれないけれど、自分のパフォーマンスのベストが世の中に対する最大のプラスであり、それのみが正解ってことなんだろうけど。伊藤氏が目指す、「みんなが共有できるポイント」って、コトバにしてみればすごく平易かもしれない、普遍的欲求なのだろうと思って、そこには激しく同意。うちもそのテーマで論文かいたってのもあるけど。スタッフもクライアントも全会一致しないと不採用、という凄まじいストイックさと企画への信念、爪の垢を煎じて飲みたいです。。。


 総じて、偏る勇気を皆さんもってるなあと。自分はすごくチキン野郎で、何事も世の中に平均値をわき目で意識しながら執り行ってしまう、出る杭になりたくない性質を持った人間なので、偏る勇気はすごく羨ましい。んー、でも、偏る勇気っていうか、人間一人である以上多かれ少なかれ偏っているわけで、その偏っている存在である自分を肯定してあげるってことなんじゃないかなあ。偏っていることを肯定してあげられれば、そこから初めて、自分の仕事が始まるというか、創造できる気がしました。偏りを肯定してあげてこその、”ふつう”だとも思うし。


 他にもいろいろあるんだけども、それは長くなってきたのでまたの機会に・・・


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本日の一枚:

スポーツ

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 東京事変および椎名林檎の暫定的「正解」。看板曲じゃないかもしれないけど、「雨天決行」がすき。