コミュニケーション3G

 最近、しばらく読んでいなかったのですが、伊藤直樹氏のインタヴューが載っているとのことなので、久々に手にとって見ました。


“QUOTATION” Worldwide Creative Journal no.7

“QUOTATION” Worldwide Creative Journal no.7


 3ページの短いインタビューなんですけど、結構面白かった。白眉は以下のパラグラフ。全文引用。

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Q.
伊藤さんが考える、クリエイティブ・ディレクターとはどんな職業なのでしょうか?


A.
クリエイティブディレクターとは、言葉を伝える意味での文学性、メッセージを開発できる、もしくは伝えたい感情を探り当てる事が出来る。同時にそれをビジュアルとして、どういう形で伝えるかという、ビジュアル・コミュニケーションを生み出すことができる。あとは、建築家のように、構造をさらにそこに加えられる。その3つを同時に出来る人が僕はクリエイティブディレクターだと思います。イサムノグチさんは、モエレ沼公園の構想をしたときに、人が動いたらどういったランドスケープが広がるのか人間の行動を含めて考えているだろうし、道を土あるいはグリーンにするとかいったビジュアルも考えている。そして、山をどう作るかという構造の計算もしている。その3つのことを同時に考えている気がする。クリエイティブディレクターの持つべきスキルはその3つであって、その3つがあれば、それは広告に限らず、コミュニケーションが発生するところだったら、駅のホームやビル、TVのなかのインターフェイスとか、いろいろなことに応用できるはず。でも世の中では、まだそうは見てくれてはいない。だから、僕はそこにチャレンジしたい。なにか新しい、ハイブリットなものが生まれる瞬間を僕らは演出できるんじゃないかなと思っているんですよね。いまはまだ、それぞれの世界が独立して固まっているような感じがしていて。細胞分裂をもっと繰り返していって、いろいろなものが生み出されることは内需拡大になっていいんじゃないかなと思っています。なにかとなにかを僕らがぎゅっとくっつけられるかもしれないし。


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 いろんな示唆が入っていると思いますけど、やっぱり「クリエイティブディレクターに必要な3つのスキル」が面白い。これって、これまで広告業界で通説になってきた言い方・考え方で敢えて切るとこういうことだと思うのですが、


 1.言葉を伝える意味での文学性・メッセージを開発できる、もしくは伝えたい感情を探り当てることが出来る能力 (What to say?
 2.それをビジュアルとして、どういう形で伝えるか、ビジュアルコミュニケーションを生み出せる(How to say?
 3.それを建築家のように、構造をさらに加えられる (


 1と2は、WhatとHowというよりも、ご本人の意図としては言語と非言語というニュアンスかも知れないですが。新しい、というかもうすでに次代のスタンダードになりつつあるかも知れないなとうちが思ったのは3の【構造】の話。2Dが3Dになるようなニュアンスが包含されていると思うのですが、それまでは商品をターゲットが購入する直前・直後を点のように捉えていたのを、ストーリーとして捉える、とか。広告掲載場所とターゲットの接触についてだけ考えるのではなくて、より広く空間・場としてどういう体験をし、そこで何を感じるのか考える、とか。統合型とか何とか言われてますけど、3はそれに当たると思うんです。複眼的視点というか、それは実際の物質的な構造かもしれないし、時系列でストーリーテリングするということも含まれるだろうし。だから単純に、どこに出稿するかみたいな、Where to say?ってことじゃないと思うのですね。本当の意味での采配というか、構造構築というか。

 
 そのほかの職種は何なのっていうと、これらそれぞれの能力のどこに拠って立つかによって、全体のディレクションにその人のカラーが出るということだと思うのです。ストプラ寄りディレクションは「伝えたい感情を探り当てる」ことに重きを置く事が多くなりそうだし、AD寄りディレクションは2だろうし。伊藤直樹氏が3の視点を持っているのは、プロモーションの部署にいたのも大きいのかなと勝手に思ったり。まあどこかに拠って立つことによるカラーはあっていいと思うのですが、この3つとも、兼ね揃えていないと、本当にイノベーティブなコミュニケーションデザインは出来ないだろうね。

 
 自分もキャリアのどこかで、3にガッツリ取り組める場に身を置きたいと思っています。そもそも、空間とか場が好きで、広告業界と併願していたのはディベロッパーだったりしたな。インスタレーション好きだし。広く大きな場で、五感で体験してもらうことによって、何か新しいコミュニケーションの形って探れないだろうかなんて、考えたりもする今日この頃。このインタビューは結構、アタマをスッキリさせることが出来て、今のタイミングで読めてよかったと思います。


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本日の一枚:

 この人も、アルバム一枚通しての構造にはうるさいイメージがあります。特にこの作品は笑 長いよw