個と集団と、相似形

 久々に面白い現代音楽を見つけちゃったかもしれないこれは。とりあえず観てください。


 
 ドイツで結成された「Heart Chamber Orchestra(ハート・チャンバー・オーケストラ)」は、12人のクラシックミュージシャンとメディアアーティストディオ 「TERMINALBEACH」によって結成されたオーディオビジュアルパフォーマーです。
演奏中の心臓の心拍数や身体の様々なバイオリズムをセンサーで受信し、ソフトウェアで解析、そのデータを楽譜のごとく独自の記号・表示ルールに則って各プレイヤーにフィードバックし、音化する。さらにビジュアルとして投影するというパフォーマンスを行っている。クラシカル、エレクトロ二カルな音楽、テクノロジーパフォーマンスがリアルタイムな情報として様々な触媒を形成しており、様々な領域が混ざり合った全く新しいジャンルを確立する可能性を秘めたアーティスト集団といえる。

 自分の生態情報という、アンコントローラブルなことを解析し作り手側に可視化し、それに基づいて可聴化・ビジュアル化してるわけですが、この感じはなんだか新しい。バイオリズムの可視化という点では、金沢21世紀美術館の「パルス・ルーム」(ラファエル・ロサノ・ヘメル)を思い出したんだけど、それを音楽にも反映させて、さらにその音楽の内容を投影したイメージをビジュアルとして投影してる。



【パルス・ルーム】 ラファエル・ロサノ・ヘメル作 金沢21世紀美術館

 個々の人間はおのおの勝手に独自に存在していて、しかも各自はそれを完全にコントロールできているわけではなく勝手に流れている。っつか、意識がコントロールしている部分なんてほんの数%に過ぎなくて、他の9割超の要素は存在すら知らなかったりする。それをテクノロジーによってずずいと引っ張り出し、拡張して芸術として呈示しているっていうところも面白いんだけど、うちは「個々勝手に存在している個体としての人と、それが集まった時の無秩序な集合としての人間」が、両方同時に感じられたことと、”両方”ってほど別のものだと感じなかったこと。人の集合なんておっきな人間みたいなものなのかもなあと思う一方、一人の人も無秩序な集団みたいなものなのかなあと。そう考えると、なんか妙な世の中への没入観で自分が境目なく解ける感じがして、面白かった。


 まあ、音楽としてはどうなの?っていうのはあるけどさ。試み自体、なんか変な新しいとこ刺してていいと思いました。


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本日の一枚:

ELECTRIC WISDOM SOUND SYSTEM

ELECTRIC WISDOM SOUND SYSTEM

 ちょっととんだやつを聞いてました。サンパウロ。このアルバムはまだ沼澤さんがいた頃のアルバムなので、エレクトロ色とダンス色がちょうどいい感じに狂ってて、聴いててぐるぐるします。