NY~SF 研修行脚 その2

 NY二日目。

 
 思ったよりこっちがあっつい。インディアンサマーなのか?我々が来る一週間前はコート登場的な勢いで寒かったらしいのに。で、この研修は基本的に食事が自由。なので自分で調達して自分で食わないといけない。ということではじめてのおつかいin NY。アカウントプランニングの教科書的事例であるGot Milk?を知りながらも、ブラウニーそのものをまともに食ったことがないのはいけないということで、ブラウニーを食ったんだな確か。まあ結論としては、朝飯に食うもんじゃないw




 このバージョンだとピーナッツバタートーストだけど。までもこういうこと。


 で、会社を回ったわけです。まずは4A'sから。



 1930年に出来たクライスラービルの18Fにオフィスがあります。写真は鏡クライスラー。誰かが、「こんなん戦前からあったんじゃあそりゃ日本まけるわー」と言ってました。まあなんかきっとまぐれとか起こるかと思っちゃったんでしょう。



 オフィスエントランス。こっちの会社の受付はなんか大概テンション高いですよね。



 で、このカンファレンスルームでセッションしました。内容としては、「アメリカも広告業界しんどい」「メディアコミッションからの脱却とかいってメディアバイイングと戦略〜制作を別業に分けたけど、結局時間フィー契約が大半という事態に陥っていて、クライアントの購買部からはコスト扱いを食らってる」「日本はせっかくメディアと制作が一緒になってるんだから、そのままでメディアコミッション偏重の収益構造から脱却できればそれが一番ベスト」「メディアバイイングまでも含めたトータルでのコミュニケーションを実現して、レベニューシェアなどの契約体系でしっかりと”アイデア”に対価を支払ってもらえる環境を実現すべし」みたいな内容でした。確かに、メディアコミッション偏重の収益構造からの脱却は常々日本の業界では言われていることだと思いますが、メディアと分ければいいってもんではないよね。購買部にコスト扱いされている、っていうくだりは結構悲壮感ただよってました。。


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 。はい、次! 雑誌の雄であるTIME INC.に訪問いたしました。



 時期が時期なだけに、かなり厳重なセキュリティ、を潜り抜けてからの〜



 カンファレンスルーム。ここではTIME誌 Marketing Director の Steve Cambron氏がメインで話してくださいました。ほっとんどiPadの話だったけどね。要するに、電子書籍が雑誌をいかに変えるか、ってとこ。ただ前半のカンブロン氏の話はほとんどiPad版のTIMEがいかに魅力的なコンテンツかって話に終始してたよね。まあ以下みたいなことです。



 確かによく出来ていると思います。日本の雑誌社がよくやっているような、紙誌面をPDF化してそのまま流し込んで売っている代物よりも、iPadというデバイスをよく考えられていると思うし、コンテンツもリッチだし。ただここまでくると、これはもう雑誌じゃないよね。電子書籍っていうネーミングが間違いだって以前講演で幅さんが言ってたけど、英語では「tablet」としか言ってないからね。まあe-bookとは言ってるかw ただ、雑誌好きな人が、こういうリッチなコンテンツを求めているのかっていうところが疑問なわけです。個人的な読みとしては、電子書籍いいじゃん!っていう人は、雑誌が単なる情報源のひとつに過ぎず、情報さえ得れれば中身はあんまりこだわらない、っていう人なんじゃないかなと思う。あの、紙を手でめくっていく感じとか、ぺらぺらと適当にページ飛ばしながら読める感じがいいんじゃん!っていう、真性雑誌フリークの人は食わないよね、ね?自分がそうだからなんだけど。要は情報の選択だと思うんだけどさ。経済誌は電子でいいけど、カルチャー誌は紙じゃないといや!みたいなね。伊藤直樹さんが言ってた「無理に電子書籍とかいって紙の雑誌をまねる必要はなく、独自のリッチコンテンツを作るつもりでいったほうがいい」っていう意味が、当事者のタイムの人の話を聴きながら少しリアルになったかも。


 で、後半のNext Issue Media の話が面白かった! → http://www.nextissuemedia.com/

 これは、コンデナスト、ハースト、メレディス、ニューズ、タイムの紙媒体五社が組んだパートナー組織で、電子書籍ビジネスに関する実験的試みの共同実施や、ナレッジの蓄積、中小紙媒体企業に対するナレッジの共有などなど、雑誌社自ら電子書籍のマネタイズを考えていこうぜ!っていう集まりなのです。彼らは自分らのミッションを "One Stop Digital Shop" というように掲げていて、将来的にはあらゆるタブレット端末に対応したコンテンツ供給の仕組みの構築を鋭意進行中とのこと。これってコンテンツ〜PR〜デジタルの包括的なプラットフォーム構築を意味していて、ともすれば広告会社抜きで広告主とのやり取りが成立しちゃうかもしれないっていうお話なんです。(なんで俺らにそんな話するんだっていうつっこみはさておき・・・) 


 電子書籍の最大の強みである「広告効果検証可能性」を、ナレッジとして集積していくのがこの団体の大きな目的だと思うんですけど、たとえば。どんなデモグラデータの人がどの時間帯に、どの誌面の、どの部分を、どのくらいの時間表示して、どの広告バナーをクリックして、その結果Eコマースでその商品を結局買ったのかどうなのか、まで全部分かっちゃうかも知れない。雑誌広告までもがばりばりターゲティングできるようになってしまうというわけです。(ここまでくるとそれは雑誌広告なのかっていう気もする)


 彼らは、もうあんまり自分たちを雑誌社だと思ってないのかもしれなくて、「コンテンツ提供者」くらいの本質的・上流的な自覚・腹のくくり方が出来ているのかも知れない。風車屋が自分たちを「風車屋」としてしかアイデンティファイできなかったせいで廃業したように、自分たちが人々に提供している「価値」とは本質的には何なのか。そこに気付いた上で初めて、「Innovation」が実現できるのかも知れないなあなんて、まだまだ旧態依然としてなかなか電子書籍参入が進まない日本の雑誌業界を顧みて思います。武富さんのお話とちょっと繋がったような。


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 で、このあとダウジョーンズにも行ったんだけど、感想は一緒ね。



 社内にネット配信ニュース用の簡易ブースがボンとおいてあります。この他にも本格的な収録スタジオブースがいくつかあって、なんかもはや新聞社って感じじゃない。



 これはピュリッツァー賞の間ですね。さすが由緒正しき新聞社だけあって、ずらり。


 ここでも結局、彼らは自分たちを「新聞屋さん」とは、もはや定義していないということです。「新聞社」ではなく「発信者」として。そのためには社内にスタジオだって持っちゃう。業界や会社が苦しいときこそ、本質価値に立ち返れる、そして手口にニュートラルになる柔軟性やトライアル精神。そういうところは、不況だとつい殻に入って防御体制になってしまう日本の会社も見習いたいとこですね。


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 そんなわけで、研修初日は紙媒体寄りだったんですけど、やっぱり苦しいんだろうねこちらのこの業界も。気丈に振る舞いながらも、要するにそういうことなんだろうってことは分かりました。ただそういうときにでも、というかこういうときにこそ、果敢にトライ&エラーをリスクをとって出来る。そういう風土が会社の中にある。それだけで、なんというか、なんかきっと大丈夫なんだろうなあという安直ながらも、本質的には間違わなさそうという印象を持ちました。結局、不況とか業界構造の変革とか、そういうのって既存のやり方の限界から来ているわけで、新しいやり方はまだ誰も知らないわけで、そうなったら自分の会社が先陣を切るくらいの心持で、いろいろ失敗していかないとゼッタイ道は開かれないよなあと、文字にしてみると当たり前のことを再認識しました。ま、それを実際に実行に移すのが、本当に難しいことなんだろうけど。


 次の日はいよいよAd Agencyに訪問します。McGarry Bowen と 360i の二社です。


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 本日の一枚:

 

BATTLE STUDIES

BATTLE STUDIES


 この研修中は洋楽しか聴かない!ということでジョンメイヤー。こっちのカフェとかレストランでもガシガシ流れてきます。って当たり前か、本場はこっちじゃとw しっかしかっこいい。ずるい。