NY~SF 研修行脚 その6


 また間が空いてしまいましたが、まだまだ続きますw NY5日目はちょうど土曜日だったので、一日フリーデイ!ってことでフリーデイに何したかは余裕があったらまとめてまた今度書きますw で、日曜日は移動日。ごーーーーっとサンフランシスコへ。サンフランシスコは物心着く前に一度行った以来でなーんも覚えてないと思っていたのですが、風景とか坂から海が見える感じとか覚えてました。懐かしい。で、その日は即眠り。次の日は再び企業訪問だったわけ。企業訪問はこの日が最終です。

=======


 でやってきたのが”Saatchi & Saatchi S”という会社。






 結構質素な佇まい。みんなしばらくここだと思わずに、目の前にして迷子w




 サステナブルってわけで、自転車スタンドが中にあります。この上はヨガスペースのロフトになってます。




 がらんとした社内。元々はパイ工場だったらしい。リノベーション。木材もマットも全てリサイクルのもの。




 リサイクルできない素材の商品はさらしものに遭います。Wall of Shame。


 いわゆる「環境エージェンシー」というタイプの業態を取っている会社さんで、クライアントのCSR活動やブランドサステナビリティ社員教育などのコンサルティング業務をドメインにしてました。1990年代半ばに創業し、2000年代に広告会社のSaatchi & Saatchiに買収され、いまはその傘下で専門領域を担当する精鋭チームってわけです。社員は大体20名。皆さんなんらかのアカデミックなバックグラウンドをお持ちで、心理学者、考古学者、組織学・リーダー学の専門家、ファシリテーター、教育者などなど。いろいろな角度からブランドや企業がサステナブルな存在になるためにはどのようなソリューションがベストなのかを検証します。




 左端がCEOのJudah Schiller氏(イケメン)、続いてオレンジがCynthia Scott氏(考古学者)。主にこのお二人にプレゼンいただきました。


 環境エージェンシーって何をしてるところかっていうと、クライアントがブランドを構築したり、社会においてサステナビリティを十分に考慮した企業活動を行っていくためにどのように振舞ったらいいかをコンサルティングするのが主なお仕事になります。ソーシャルネットワークが人々をいつでもどこでもリアルタイムにつないでくれるのが当たり前の昨今では、昔のようにCMを大量投下すればそこで謳っているブランドのいいところをそのまま受け取ってくれるなんてことはないわけです。どんなに押さえ込もうとしても企業やブランドへの不平不満や嫌悪はネット上に転がり、ソーシャルメディアによって果てしなく伝播していく。ある意味、非常に「民主的」な形でブランドイメージは形成され、企業側はコントロールできない。だからこそ、日頃どのような態度を社会に対してするべきなのか、十分に慎重にならないといけんのです。

 
 加えて最近の若者は、機能や価格に加え「ブランドが持っている思想・方向性」が自分の生き様、考え方とどれだけ親和性を持っているのかを非常に気にする傾向にあるという話。「こんな環境に悪い商品は自分の価値観が認めないから、使いたくない」のような意識が消費行動において当たり前に起きているそうです。日本も若干似たようなところは起こり始めてますよね。そういった実情からも、ブランドサステナビリティは今後ますます重要になってくるとのことでした。


 彼らが、クライアントのブランドをサステナブルなものにするうえで、とても重要にする要素が「従業員」です。彼らは生身の人間として時に顧客に実際に触れ、時に商品を開発し、時にその企業の看板を背負ったままメディアに露出します。その従業員がブランドの価値を理解してなかったらサステナブルになんかならんわけで、そんな従業員教育コンサルの事例をひとつ。


 クライアントはウォルマート。悪名高き世界最大の小売流通企業です。「環境問題に対する取組みが消極的」というネガティブな印象は売上げにも悪影響を及ぼしているということで、SSSの出番。どうやったらそんな企業イメージを変革できるか。


 全米にウォルマートの社員は約150万人いるわけで、いきなり一箇所に集めて講義、みたいなことは無理。かといってマニュアルだけ納品して各支店に届けてお仕舞いっていうのでは人はおそらく動かない・変わらない。彼らは150万人の中から、「個人的に環境問題に非常に興味がある。プライベートで積極的に取り組んでいる」という熱意のある500人を選抜し彼らを「チャンピオン」と名づけます。そして彼らと丸一日のワークショップを通して、各支店で彼らが軸となって何を実践していけるか、同僚たちにこの活動の素晴らしさをどう伝えるかを授けるわけです。同時に、その教えを”布教”する上で必要なツールも授けます。



 彼らは各地にその哲学・行動プランを持ち帰り、熱心に社員を教育してくれたそうです。これはウォルマートが儲かるために、ということではなく、純粋に「自分が大事に思って実践していることをより多くの人に知ってもらいたい、実践してもらいたい」と思うからだそうです。結果として19000人が禁煙を始めたり、車をやめて歩いて通勤する者が増加、リサイカブル商品の使用率が日常生活の中で増えるなど、従業員のいつもの暮らしがサステナブルになったのだと。それによって不思議なことにウェルマート本体のブランドイメージも向上。レジ係の離職率も低下し、アースマンス中にP&GやGEとタイアップして作成した環境関連PB商品は飛ぶように売れたのですです。


 サステナビリティを本当の意味で組織に根付かせようとしたら、その組織の中に推進エンジンになってくれるような人を作らないと、自分たちが離れた後や、研修が終わった後にすぐに途切れてしまう。「ノウハウ伝授」ではなく、いかにサステナビリティに対する理解者・指導者を作れるかが、彼らがコンサルティングする上で重視する大きなポイントだったように思います。あくまでも対象としての「従業員」ではあるんですが、本当に意識が改革された場合はより上位の「一生活者」として、プライベートも業務中も境目無く、その人は変われるんですね。



 クライアント業務とは別に、彼ら独自の環境サステナビリティ向上のためのキャンペーンとして「D.O.T」というものを紹介していただきました。「Do One Thing」とは、何かひとつ、ほんのちょっとしたことでいいからまず実践してみよう、そしてそれを実践したことを全世界に向けて宣言して、このムーブメントを大きく膨らましていこうというもの。One Thing の内容をこちら側から規定したり、中身に優劣をつけないのがキモで、とにかくやろう!という心持ちの大切さが伝わってくる。現在3200万人の人が表明してくれていて、CEOのJudah氏はこれを10億人レベルまで引き上げるのが目標だそうです。気になった人、自分も参加したいと思った人は是非なにか宣言してみては?? → http://www.strategyforsustainability.com/do-one-thing/


 
 従業員と顧客と会社の風土、この三角形の関係をサステナブルに調整するのがSSSの仕事だと感じます。どんな広告を制作するかという枠組みだけではブランドを作るのはこのソーシャル時代にはもはや限界なのかも知れないですね。あとは広告以外の専門性の力かな。皆さん学者然とした頭のキレキレな方ばかりで(若干お堅い感じはしましたが。)、やはり専門性って強いななんて思いました。我々広告会社の本質価値は「広告を作ること・メディアを買い付けること」なのか、「企業と消費者のコミュニケーション関係をよりよいものに導く」ことなのか。SSSが志向し、実現している後者の方向が今後の主流にどんどんなっていくと思います。


 「企業vs消費者」のような対概念でマーケティングを切るのではなく、ひとつの大きな運動体として以下に持続可能性を持ってお互いがハッピーでいれるか。そこには、企業人ではあり生活者でもある、従業員っていう接点が重要なのかも知れないですね。なんかここまで徹底してそこにフォーカスしてブランドを組み立てている事業モデルは初めて目の当たりにしたので、目うろこでした。面白かった。



 次は最後。twitter社に潜入したの巻。


〜〜〜〜〜〜


本日の一枚:


[rakuten:hmvjapan:10303285:detail]


 ドミニカのラテンピアノ怪人、ミシェル・カミロ。今度ブルーノート見に行くので久々に聞きました。トンボはやっぱり何回聞いても狂ってるなこの曲!かっこいい!