オーラの引き算が出来るリーダー像

 せっかく星のやを体験したので、あのリゾートのバックヤードをちょっと調べてみようと思って二冊。



星野リゾートの事件簿

星野リゾートの事件簿



星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則

星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則



 星野リゾート代表として、日本のリゾート再生請負人とも言われている星野佳路氏。彼が星野リゾートを現在の成功軌道に乗せるために、どのような信念を持って、どんなリーダー像を形作りながら、どうやって経営してきたのかが、結構わかって刺激になりました。


【初期衝動】

 
 彼の経営の根源にある”初期衝動”は、うちは「愛国の心」だと思います。政治思想とかそういうことではなく、日本いう国の文化やそこに住む人々に対する、深い愛と、自信。日本は素晴らしい国であると心の底から思っているからこそ、彼はこの国の風土や自然、文化を最大限活かしたカタチで、外資のリゾートに負けないくらい魅力ある日本特有のリゾートのあり方を全力で追求している。会社のスローガンは「日本の観光をやばくする」 やばくっていう言い回しに好き嫌いはあると思うけど、外国から来る方々には日本を大好きになって帰ってもらいたいし、日本に住む人々にももっともっと自国に対する自信であるとか郷土愛を持ってもらいたいんだろうね。そのパッションが人並みはずれていると感じます。


合気道型リーダーシップ】


 彼の下で働く従業員のみんなが、きっと社長のそんなところが大好きなんじゃないかな。あ、「彼の下」という言い方がそもそも適切ではないかも。この社長のすごいところは日本の観光業に対する並外れた愛に加えて、「社員のことを信じる力」がとんでもないとこ。権限委譲を大胆にする、問題解決を現場スタッフになるべく任せて頭を使わせる、たとえそれが自分が出て行って鶴の一声を発すればものの数秒で解決すると分かっていても。会社とか、その宿泊施設のバックヤードをひとつの”エコシステム”として自走する状況こそが彼のひとつのゴールなんだろうな。それこそ、自分がいなくなったとしても、変わらず、いやむしろ良い方向に変わり続けるような、エコシステムの構築。金銭や名誉のような、自分の人生で簡潔する成功が彼の大ゴールじゃないから、そこまでやらないと彼の目標は本当の意味では達成されない。そのためには自分はなるべくいないほうがいい。自走し始める前の大枠のデザインを決め、絶えず自分の目指す初期衝動のゴールを発信し続けることが、お仕事ってわけ。


 失礼を承知で思ったのは、星野社長はご自身個人の能力に対して、とても謙虚なのだろうなあと思いました。おそらく、彼は自分ひとりで成し遂げられる物事の上限をとても冷静にわきまえているんじゃないかな。自分ひとりで出来ることの限界を理解し、信念・熱意を持って動く他者を活かすことが、それをいかに凌駕するかを身をもって知っている。いかに自分以外の人間を活かすか、能力を引き出すか、素晴らしい人生の実現の手助けをするか。そこにものすごい神経を使って、人のことを見ている人なんだと思う。自分の直感やカリスマ、経営者としての能力を、いい意味でほとんど信じていない感じ。だからこそ、シンジラレナイような権限委譲や、倒産寸前まで社員と心中覚悟で見守るという判断が出来る。これは決して、MBAホルダーだからとか、頭がいいからとか、そういうことだけで出来ることじゃないと思います。


【古典へのリスペクト】


 ビジネスにおける重要な判断の基準も、古典と言われるような経営学の書籍を、真摯に愚直にそのまま丸ごと実行するスタイルをとっている星野氏。自分ひとりの人生の直感よりも、歴史を越えて教科書として扱われるような名著を信じるその謙虚さ。だから人がついてくるんでしょうね。この人はいわゆるリーダーというよりも、ファシリテーターとかコミュニケーターに近いんだろうな。どのように従業員と接すれば、理想とするリゾートが形成されるか。それもトップダウンではなく、従業員一人一人が自走しながら、それぞれの施設に「企業文化」が自生させることを念頭に置きながら。


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そういえば、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」の第一回放送が、実は星野佳路氏でした。



 オーラがないのが、オーラっていう印象の人。自分のオーラをコントロールできる人。そういえばタモリとか桑田佳祐とかもオーラないって言われてますね。人を活かし、自分ひとりで実現できることのはるか上を成し遂げるリーダー像。オーラをマイナス方向にコントロールできるってなかなか出来ないと思うのよね。無駄にえらそうな人、無駄に話しかけづらい人、そして誰も本音で進言できない人。そうならないように。嗚呼自戒、ですね。


 実際に星のやをお客様として体験できた後にこれらの本を読むという理想的なスタディが出来て、良かった。賛否両論あるのは、目指す価値・届けたい体験がはっきりしてるからじゃないかなと思う。彼からの最大の学びはコミュニケーションに自分なりのスタンスを持つこと。そしてそれがもたらすべき将来を信じることの力。勇気がいるけど、大事にしたいです。


 個人的にはとてもよかったのでまた行きます。 


〜〜〜

本日の一曲:



 なんとなく、春やなーっていう週末なので。結構前のライブですね、それこそまだシャングリラが始まる前の。なんか召喚しそうだよねこの人のライブはいつも笑